小林耕平「5」
開廊日時: 12:00-19:00 *会期中、日・月・祝日休廊/〈art-Link〉のため、9月28日(日)はopen!
作品: 「1-10-1」他
1974年生まれ今年29才の小林耕平は、名古屋 art space dotというアーティスト自営スペースのメンバーのひとりで、1999年福井ビエンナーレで頭角を現した若い映像作家です。
小林耕平は、グリッドで仕切られた小室のなかでうごめき続ける人物の影や、無重力を思わせる空間にゆがんでみえる人体と物体を映し出した作品、また人物の影が更に影をおびながら増殖してゆく作品などを制作しています。彼の作品はすべてモノクロの画面で、一貫して無音で提示されますが、しかし拭いきれない「ノイズ」を脳裏に残します。そのうごめく物体/身体は、あらゆるコンテクストを剥奪され、漂白された「影」にまで還元されたドッペルゲンガー---亡霊・実体のないもの---のように思え、深い印象を残します。
今回の展覧会「小林耕平5」は、小林耕平の5回目の個展であるのでそう名付けられていますが、彼の作品タイトルもすべて数字の羅列のみで表記されているだけで、一切の情緒的な副題や、作品の意味合いを表すようなタイトルは付けられていません。
それはまるで監視カメラで撮影した映像に、ただ通し番号を入れているだけかのような冷たさで、ヴィデオテープをデッキに入れるまでは何を記録したものなのか想像もつかないような、無味乾燥な数字です。
どこか超越的な突き放した視線で制作された彼の作品のなかで、今回ご紹介する「1-10-1」は、三面スクリーンを使った、やはりモノクロ/無音の映像作品です。
今までの作品にはどういったかたちであれ人体が写し出されていましたが、今回ご紹介する作品には、人体はおろか人の気配もなく、超越的なこちら側の視線がジオラマの上を滑るだけです。ジオラマは白い紙製で、キッチュでありながら独特のセンスと完成度を映像のなかで保っており、その誰もいない町、遊園地、住宅、倉庫のような、特定できない奇妙な「場所」を、延々と写し出していきます。
黒い闇の中に浮かび上がる白いジオラマ。夢(悪夢?)の中のようなその「場所」で小林耕平が捉えた静かな闇はことのほか深く、しかしそれでいてどこか平坦で、その不思議な闇はいいしれぬ不穏な予感を喚起します。この得体の知れない不安感は、彼のものだけではなくわたしたちに通底するものなのかもしれません。
その他、元来油画科出身でありながらほぼ初発表となる、平面作品もご紹介いたします。