神谷徹展
2006年6月30日(金)- 7月29日(土)
神谷徹は1969年生まれ。東京芸術大学油画科大学院卒業の後、アイルランド政府奨学生としてダブリンを訪れ、その後もアーティストインレジデンスで同じくダブリンに2度滞在しました。2003年府中市美術館における「ZONE」展などで注目され、ここ最近根強いファンが増えています。現在は京都造形大学助教授として京都に滞在、制作を行っています。
本展ではアクリルによる線描画と油彩という、2つの異なった技法で制作された作品が並べて展示されます。アクリルの作品は独特のマットな質感を持つグラデーションをベースに、ものの輪郭をなぞるかのように人物や風景が描かれ、とても繊細な味わいがあります。油彩画の方は写実的な表現でありながら、どこか異空間を思わせる不思議な奥行きと透明感が印象的です。この展示の中では油彩画がポジで、アクリル画がネガのような存在に見え、色や形はすべて光によって形成されていることを改めて感じさせられます。作品の画面上に描き出される日常の何気ない光景は、いずれもありふれており、とても匿名的です。けれども特定の意味づけが消し去られた分、誰もがその中に入ってゆける、より深みのある世界が生まれています。様々な要素が調和し、独特の静けさを持つこれらの作品は、いつまでもその前に佇んでいたくなるような魅力にあふれているといえるでしょう。
今後ますますの活躍が期待される神谷徹の、すべて新作で構成された個展となりますので、ぜひご覧ください。