鈴木友昌 展
端正に作られた高さ60cmほどの小さな木彫の人物像は、皆ファッショナブルで個性的。一見スタイリッシュな印象ですが、古典的な手法によって作られた作品はその人自身の内面まで現す完成度の高いポートレイトに仕上がっています。
鈴木友昌は、モデルと徹底的に向き合って制作していく方法をとり、目の前のモデルと対話をしながら、素材を自分の腕の中に抱え込んで制作できる大きさの作品を作っているとのこと。シンプルでストレートなその具象的表現技法は、多様なスタイルにあふれる現代美術の中で異彩を放ち注目を集めています。
また、2010年の後半からイギリス、イタリアを中心に美術館での個展の巡回が決まっており、今後ますますの活躍が期待されます。
本展では、新作彫刻4点を展示。広い空間にぽつり、ぽつりと小さな彫刻が置かれることで、逆に人物の存在がより強調されるインスタレーションとなっています。
今回作品のモデルになっているのは、ミュージシャンを夢見て絶対有名になりたいと語る少女や、路上で洋服を売るイタリア人の青年、元々西洋人のアイテムである背広を自己流にアレンジして着こなすアフリカ系の若者など、これまでの作品同様派手な外見で自分をアピールする若者達です。
けれども彼らは強烈な自己主張をしつつも、本当に夢が叶うのか、異国で自己実現が出来るのか、未来に不安を抱きながら都会で懸命に生きていて、おそらく今後も変わらない生活を送るであろうごく普通の人達でもあるのです。
作家はそのような生き方をしている人々を肯定的にとらえ、作品化していくことで、現代社会の状況を映し出しているといえます。
一体の人物像からその人自身やとりまく環境など、さまざまな背景の読み取れる深い表現力を持 った鈴木友昌の木彫作品は、静かながらも鑑賞者に強い印象を与えてきます。