中西夏之「キアスム / chiasme」
中西夏之は1935年東京生まれ。
2012年、ニューヨーク近代美術館での「TOKYO1955-1970:新しい前衛」展に出品、国内では2013年に「ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡」展が開催されるなど、近年初期の活動が国際的に再注目されています。前衛的活動の後、60年代後半から仕事の中心に据えられている絵画制作も非常に独創的であり、常に日本を代表する作家として存在感を示してきました。
中西の絵画は、様々な主題や要素への取り組みが連鎖、関連し、複雑に影響し合って成り立っています。本展のタイトルになっているメルロ=ポンティによる用語、chiasme(キアスム)の持つ意味、交叉、絡み合い、見るものと見られるものとの相互交差といったものは、まさにそのまま作家の思考や制作方法につながっています。
そしてその制作状況は、完成した作品が整頓して掛けられる四角い空間ではなく、生の作業が日々進行している作家のアトリエ内でこそ発生しているといえます。
本展では、今現在の中西夏之のアトリエの一部をそのまま展覧会場に移動、年代や様式の異なる大小様々な絵画作品を雑然と配列します。
この状態を見ることによって、難解な中西夏之の作品が非常に確固たる理論によって成り立っていることが読み取れるのではないでしょうか。
同時に初期の非常に重要な作品、1963年制作の立体の「韻」と「洗濯バサミは撹拌行動を主張する」や、今年になって制作された最新作も展示。つながりの分かりにくかった初期作品から絵画作品の相互の関係を視覚化します。
尚、本展開催に併せて、英語版図録を発行をいたします。(刊行は11月下旬予定。日本語対訳付き)展覧会に関してのみならず、中西夏之の仕事を総括してとらえた充実した内容の一冊となります。
本展に寄せて:
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中西夏之―キアスム chiasme(PDF)
飯田高誉(本展ゲストキュレータ)